「業務改善」──この言葉に、どんなイメージを持たれるでしょうか。
「面倒くさそう」「理屈っぽい」「現場には関係ない」……そんな印象を持つ方も多いかもしれません。実際、私が会社員として働いていた頃、現場で改善の話を持ち出すと、よく冷たい反応を受けました。
「どうせ変わらないよ」
「うちは特殊だから」
「前にもやってみてダメだったじゃないか」
そんな声が飛び交う中で、私はいつも複雑な気持ちになっていました。確かに過去に失敗した改善プロジェクトがあったのも事実です。皆さんの中にも上から押し付けられた施策が現場に定着せず、結局元に戻ってしまった経験をお持ちの方も少なくないでしょう。
でも私は、目の前の無駄や非効率を見過ごせませんでした。紙で回される書類を何度も転記する作業、誰も見ないのに作り続けられる帳票、システムがあるのに使われずに手作業で処理される業務──こんな非効率の中で疲弊していく仲間を何人も見てきたからです。
残業が当たり前になり、ミスが頻発し、モチベーションが下がっていく。そんな職場の空気を変えたいという思いが、私を突き動かしていました。
改善は、特別な立場の人だけができるものではありません。管理職でなくても、システム部門でなくても、経営企画でなくても。誰にでも、小さな一歩から始めることができるものです。
ほんの少しの工夫や気づきが、やがて周囲を動かし、仕組みを変え、組織を変えていきます。私が副業として関わったある職場では、それまでまったく改善など意識されていなかったのに、ほんの少し「こうしたら良くなるかも」と行動しただけで、心から感謝されました。
「こんなに楽になるなんて思わなかった」
「もっと早く教えてほしかった」
「他にも改善できることがありそうですね」
その瞬間、私は確信しました。改善には、人を救う力がある──と。
しかし、改善がうまくいくときと、いかないときがあるのも事実です。同じような提案をしても、ある職場では歓迎され、別の職場では拒絶される。なぜそんな差が生まれるのでしょうか。
本書では、私自身がこれまでに経験した数々の成功と失敗をもとに、改善がうまくいかなかった理由、うまくいったときに何があったのか、そして小さな一歩を踏み出すための考え方やコツをお伝えしていきます。
技術的な手法やフレームワークの解説書ではありません。現場で働く一人ひとりが、明日からでも実践できる「改善のはじめ方」を、リアルな体験談とともにお話しします。
完璧な改善案を一度に実現しようとする必要はありません。まずは目の前の小さな不便を解消することから。その積み重ねが、いつか大きな変化を生み出します。この本が、あなたの職場に変化の風を吹き込む「最初のきっかけ」になることを願って。そして、改善を通じて、あなた自身と周りの人たちが、もう少し楽に、もう少し楽しく働けるようになることを心から期待しています。
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